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審査講評

New A Live vol.18,19 ファイナルについて、3名の審査員の方々より講評を頂きましたので、掲載させていただきます。

【New A Live vol.19】

山内翔平さんより

北海道大学アカペラサークルNoSeRAOBの山内翔平と申します。審査委員長を拝命いただいております。当日の全体講評は来られた方限定ということで、当日演奏された4バンドに共通している改善点を3点指摘させていただきます。私も含め、あくまで1人の意見ということで、参考までにご確認ください。

1点目は音量・音圧のバランスです。
一般的に、ボーカルの音量を常にコーラスが上回ることはないと考えます。字ハモ等を除いて、バックグラウンドであるべき音は曲調や歌詞を表現する為の下支えとしてあるべきですので、その点を意識して練習してみてください!
一方で、過度なマイキングやアウトプットの抑制は音圧の低下や発声のブレに繋がります。和音やフレーズ全体の中で自分のポジションはどこにあるのかを俯瞰できると周りと差がつくかもしれません。

2点目はリズムに対するアプローチです。
皆さんが思う以上に、リズムの与える印象は大きいです。はしる、もたるだけではなく、曲調によって強拍を後ろに置くべき場合やオンタイムでスムーズに曲が進むべき場合があります。基本的に原曲のリズムが最善ですので、リズムに違和感がないか確認してみてください!
パーカスについては後段で。

3点目はステージ上での立ち振る舞いです。音楽的な話は一旦横に置いて、自身の歌い姿を動画や鏡で見てみてください。目線やマイクを持っていない方の手の動き、音取りからMCまで全てが観客に見られています。自信の有無に関わらず歌っていない時の姿や表情で聴き手の印象をコントロールできるよう意識してみてください!

最後にパーカスについて。まず音色に重点を置いてください。ドラムセットが必要ない演奏形態の為、クラッシュシンバルもスネアもタムも際限なく使い分けられる利点を生かしていただきたいと思います。大前提として理想的な音色を明確に理解する必要があるので、アカペラではない音楽も含めて、多くのジャンル、曲に触れてセンスを磨いてみてください!
次にフレージングですが、打数の要不要、鳴らすべき音の選択に課題感があると思います。不要なクラッシュシンバルが鳴っていたり欲しいところにキックが無かったり等…パーカスの永遠の課題ではありますが、聴き手に違和感を与えずに臨場感を表現できるよう、引き出しを増やして取捨選択が出来るようにしてみてください。
まとめに練習方法として、(私を目指してくださいとは言いませんが)大学生の頃は主に次の練習を行なっていました。
①様々な種類の曲を聴いて、原曲通りに打ってみること
②原曲から不要な音を抜いてキックとスネアだけで演奏すること
③メトロノームを延々と流して思いつく限りのフレーズを繰り返し試すこと
④自分の演奏を聴いて粗探しをすること
⑤自分の演奏のBPMを±5ずつ変えて演奏すること
是非お試しを!

最後になりますが、1年目のみなさんにとっては、これまでの期間よりこれからの期間の方が長いです。先輩方みんなは1年目より上達していますし、皆さんもそうです。結果に一喜一憂しすぎず、楽しんで頑張っていきましょう!

高田諒さんより

北海道学園大学アカペラサークルLapisOBで、現在は北海道社会人アカペラサークルStoveLounge所属の高田諒と申します。

私からは全体講評として、3点お話させていただきます。

1点目はボーカルを引き立たせるアプローチについてです。 ボーカルと言うのはフロントマンであり、観客の視線や耳は基本的にはボーカルに向けられることが多いと思いますし、そうであるべきだと私は考えています。そのためには、コーラスの総音量がボーカルの音量を上回ることがあってはなりません。コーラスはあくまでバックグラウンドであることが基本であり、ボーカルを引き立たせることを第一に考え、音量や音圧などの調整をしてみると良いと思います。一方で、ボーカルはコーラスに対して、表現したいことを明確にしてあげてください。「ここのフレーズは息を多めに、音量は小さめに表現したい」、「ここのフレーズは声の芯は太く、音圧は強く歌いたい」など、選曲やその曲の解釈などで表現したいこと、できることはたくさんあるかと思います。その考えをコーラスに明確に伝え、コーラスはボーカルの表現が最大限生かされるコーラスワークは何かを考え、演奏してみてください。その結果、ボーカルが輝くと同時に全体での一体感が生まれます。ボーカルとコーラスの双方が歩み寄りながら最適解を模索してみてはどうでしょうか!

2点目はコードの理解についてです。ボーカル、コーラス、ベースそれぞれコードにおける役割があり、それは当たり前ですがコード毎に違います。自分がそのコードにおいてどのような役割を担っているのかを考え、音量や歌い方、響かせ方などを今一度考えてみてください。音はあっているのにハモって聞こえないのは、多くはそれが原因だと私は思っています。コードの役割を理解して歌うことができるようになるとアカペラが2倍にも3倍にも楽しくなりますので、アカペラをより楽しむためにも頑張ってみてください! 

3点目は歌い姿についてです。ここでの歌い姿とは立ち姿などの全体的な歌い姿と歌う際の表情を指しています。アカペラにおいて聴覚的要素はもちろん大切ですが、視覚的要素も非常に大切ですので、ぜひ気にしてみてください。

まず立ち姿についてです。みなさんそれぞれ、表現の為に身振り手振りをしているかと思いますが、その動作に統一感をもたせるとより視覚的に引き込むことができます。というよりは、視覚的違和感を無くすことができると言う方が正しいかもしれません。身振り手振りは非常に大切ですが、それが個々人で違う動きだとどうしても演奏に集中できません。逆に統一感のある動きだと演奏においての転換となったり、より演奏にストーリー性が生まれると思います。

次に表情についてです。当たり前ではありますが楽しい曲は楽しい表情、悲しい曲は悲しい表情で歌いましょう。曲の解釈によっては例外もありますが、基本的に表情は演奏している曲の雰囲気に合わせて作るべきであり、それによってより演奏が引き立ちます。また表情は歌い手にも影響を及ぼします。表情を作ることでより感情が声に現れ、それは必ず観客に伝わります。歌だけではなく、歌う際の一挙手一投足が演奏に大きく影響することを意識し、自分たちの演奏を見つめ直してみると良いと思います。

以上、簡単ではありますが全体講評とさせていただきます。

最後になりますが、みなさんのアカペラ人生はまだまだ続きます。まだ始まったばかりです。これからの頑張りで結果は大きく変わっていきます。今回の結果に一喜一憂せずに、楽しむ気持ちを大切に頑張っていきましょう!出演されたみなさん、大変お疲れ様でした!

遠藤日奈子さんより

出場者・観客のみなさま、そして実行委員会のみなさま お疲れ様でした!
私からは主にハーモニーと譜面について、以下に講評いたします。

まずは自分たちが歌う楽曲において、自分のパートの音はコードにおけるどの音を担当しているかを意識していただけると、より完成度の高い演奏が目指せると思います。
またフレーズの作り方にも目を向けてほしいと考えています。
例えば一概にスタッカートといっても、どのように歌い始めどのように終止するのがそのフレーズへの理想的なアプローチなのか、どのくらいの音量で推移すべきかは楽曲やブロックによって大きく変わってくるはずです。これらを意識して作り込むことで表現の統一感が増すと思います。

そして良いハーモニーは適切な譜面のもとに成り立つと思います。
作譜者は楽曲のコード進行に則った譜面になっているか・構成は適切か(ブロックとブロックの繋がりに違和感はないか)・音域はそれぞれのメンバーに合っているか・今の自分たちに適切な難易度か なども考えながら、より良い譜面を制作していっていただければと思います。
パーカッションの方も同じです。原曲をよく聴いて適切な音の選択と構成を考えてみてください。
楽譜を書いていない方も、上記の内容を意識しながら譜面に目を通し、疑問に思う点や意見があればグループ内で相談してみるといいと思います。
グループ全員で楽譜を精査することも必要な過程の一つと考え、意見を交わしながら楽譜のアップデートを図ってみてください。

これからもみなさまが充実したアカペラライフを過ごされることを祈っております!

 

 

【New A Live vol.18】

山内翔平さんより

審査委員長を拝命しております、北海道大学アカペラサークルNoSeRAOBの山内翔平と申します。
まずは出場された皆さん、応援いただいた皆様、大変お疲れ様でした。
当日の全体講評では駄弁を弄してしまいましたので、本文章ではしっかり職責を果たしたいと考えております。少し長くなりますがよろしくお願いいたします。

まず全体の感想ですが、音程に対する感度は近年で特に良かったと思います。楽譜で示されたメロディラインや和音を一定程度アウトプットできておりましたので、聴いていて心地よく感じました。
一方で、音符の長さや休符の捉え方、抑揚のコントロールについては改善の余地があると考えます。普段の練習時は音程に意識が偏りがちですが、縦のずれや不自然な音量バランスの変化は聴き手の印象を大きく左右します。今一度ご確認いただければと思います。
優勝バンドの決定に当たっては、曲全体、ひいてはステージ全体のまとまりや完成度を重視いたしました。音楽的な各要素の精度もそうですが、メンバー間で演奏の方向性やメッセージ性を共有できていたかに偏差があった印象を受けました。

次に、練習方法についてです。ここが最も大事なポイントです。改善点に対してどうアプローチするかでグループとしての完成度は大きく変わると思っておりまして、これまで審査していた中には「個々の力は優秀だが意識が共有できていない」「サビは上手だがアウトロで精度が下がる」等の理由で優勝を取りこぼしたグループがありました。せっかく横並びで始まったであろうアカペラ、追いつき追い越せで頑張ってみてください!
1つ目に、曲のテンポを変更しての練習を御提案いたします。テンポの速い曲の場合、音の入るタイミング、切るタイミングが疎かになっている可能性があるので、BPMを10程度落としての練習が効果的です。また、全音符の多い楽譜の場合、テンポを上げてフレーズの全体像を掴む練習方法が有用です。
2つ目に、曲の後半からの練習を御提案いたします。全体を通して、曲が進むにつれて精度が落ちたグループが多く散見されました。ある程度滞りなく演奏できるようになると、1曲を通して演奏する練習を繰り返しがちです。流れを掴んだりスタミナをつけるのには良いですが、後半の精度や盛り上がりに欠けてしまう危惧があります。また、ラスサビやアウトロの与える印象は絶大です。従って、曲の終盤を意識して練習してみてください。
最後に3つ目として、2パートでの練習を御提案いたします。ここでのパートは①ボーカル、②コーラス、③ベース、④パーカスとします。具体的には①④や②③のみでの演奏です。ピッチやリズムの主軸となるパートを除いて演奏すると、思わぬところでずれが生じるものです。敢えてパートを減らして練習することで、必要以上に1パートに依存することを避ける狙いがあります。

最後に講評の締めですが、今回の結果は当日時点でのものに過ぎません。平等に時間は流れますので、練習を積み重ねて更なる進化を期待しております。大会の結果を抜きにしてもより良い演奏は演者、聴き手それぞれを幸福にします。みんなで頑張りましょう!!

菊池宏夢さんより

New A Live vol.18にご出演された皆様、素敵な演奏をありがとうございました。
まだアカペラを始めて、グループを結成して数か月という短い期間の中、試行錯誤をして練習を重ねてきたグループばかりかと思います。まずは心よりお疲れ様でした。
皆様の想いを無駄にしないよう審査員一同責任をもって優勝グループを1バンド選出させていただきました。
 
私が審査基準として一貫して持っていることは「伝わる演奏」かどうかということです。
グループ全体として「伝えたいもの」をメンバー1人1人が理解しており、その「伝えたいこと」を聴き手に対して適切にアウトプットできているかということを軸として審査をしております。
それを踏まえて全体を通して感じた点を記載させていただきます。
 
まずは10分間という時間の使い方に関してです。
皆様はこの10分間という時間をどこまで細分化して自分たちの表現を突き詰められたでしょうか。まず一番大枠のところですが、その選曲の意図は明確にグループ全体で共有されているでしょうか。結果的に“ただ2曲を披露する時間”になってしまってはいないでしょうか。まずは自分たちの強みや表現したいことを突き詰めてそれを表現するための最適なセットリストを提示していただきたいです。
「1曲目はバラードだったから2曲目もバラードじゃなければならない」などという画一的な話でありません。
例えばバラードとアップテンポの組み合わせのような一見馴染みのないセットリストを組んだとしても、納得感のあるようなアレンジやボーカルの特徴、そのグループの背景などがあり、聴き手が納得できたのであればそれは紛れもなくそのグループの色ですし、それを表現できるグループはアーティストとして間違いなく強いと思います。
自分たちの強みや表現したいことを再度話し合い、選び抜かれた選曲をステージで披露していただきたいです。
そしてその表現したいことを聴き手に伝えるためにさらに細分化してステージ上での10分を表現していただきたいです。
衣装、入退場SE、表情管理、立ち位置、立ち姿、目線、ステージング、MCなど、表現したいことを聴き手に伝えるために補完できる要素が簡単に上げただけでもこれだけあります。その“表現”を少しでも怠った瞬間に発生するステージの“違和感”を聴き手は敏感に感じ取りますし、その微妙な“違和感”は最後まで潜在的な意識の中で残り続けます。
この“違和感”がノイズとなってしまっては皆さんがせっかく考え抜いたセットリストも、伝えたい表現もぼやけて聴こえてしまうので、この演奏以外の表現も十分に考え抜いてステージに上っていただきたいです。
 
 
それを踏まえ次に演奏の技術面で感じた点です。
まずは単純に声量が小さいグループが多かった印象を受けました。マイクにしっかり音が乗っていないと物理的に音が聞こえてきませんので、伝えたいことを聴き手が感じ取ることは不可能に近いです(極端にppの表現をしたいフレーズであれば別)。まずは基本的な発声を身に着けて声を出せる状態にしていただき、そこから引き算でフレーズによって最適な音量を模索していただきたいです。
そこが身に付いた状態で次はフレーズに対してのアプローチに関してです。
特に自分たちの伝えたいことを表現するためにそのダイナミクスのアプローチは正しいかという点はグループ全体でもう一度深く話し合っていただきたいです。ただ楽譜を追うことに精一杯になっていないでしょうか。他のパートとのフレーズの掛け合いは意識できているでしょうか。ただの声の大小だけではなく起承転結として曲の流れを意識してフレーズを意識できているでしょうか。原曲やライブ映像を見て落としこむでも、自分たちなりに新たに考えてみるでもアプローチはなんでも構いませんので、“自分たちなりの表現”の解像度を上げていただきたいです。
その大枠をつかんだうえで細かい練習(ピッチ感、休符感、入り切り、タテ、母音、子音)などをひたすら反復して身に着ける時期に今は充てていただきたいです。
上記はあくまで曲に対してのアプローチのひとつなので身に着ける順番は順不同です。もちろん全てを意識できてばいいですが、まずは自分たちの表現したいことや強みを理解して、それを伝えるためにまずはやるべきことをピックアップして伸ばしていっていただきたいです。
 
最後に根本的なところですが、表現においてそのアレンジは適切だったかという点ももう一度見直していただきたいです。原曲を完コピすることが必ずしも正義とは思わないですが、意図がわからない原曲から逸脱したコードやブレイク、リードを回しなどはこれらもお客様にとって“違和感”となります。
原曲から離れた挑戦的なアレンジやマッシュアップなどは個人的には好きですし、クリエイティブの観点からどんどん増えていってほしいと思いますが、意図のないそれらの挑戦はただの自己満足になりかねません。
なぜ原曲はこのコード進行なのか。なぜリードはそのフェイクをいれたのか、なぜそこにボイパのそのフレーズがあるのかなど、意識して曲を分析して理解ができた土台をまずは作るように意識をしてみてください。その土台は別の曲に挑戦する際にも知識として生かせると思います。
 
演奏を通じての総評は以上になります。
まだまだ皆さんはアカペラに触れたばかりでこれから壁にぶつかることが多いと思いますが、それをのびしろととらえて今後の成長につなげていっていただきたいです。今回はコンペティション形式でしたのでそれに向けての取り組み方があったかとは思いますが、それぞれの立場で今後もアカペラを通じた活動に楽しんで携わっていただけますと幸いです。
北海道のアカペラシーンを作り上げていくみなさんのご活躍を今後とも陰ながら応援させていただきたいと思います。

遠藤日奈子さんより

出場者・観客のみなさま、そして実行委員会のみなさま お疲れ様でした!
私からは主にハーモニーと譜面について、以下に講評いたします。

まずは自分たちが歌う楽曲において、自分のパートの音はコードのどの部分を担当しているか・原曲におけるどの音を担当しているかを意識していただけると、より完成度の高い演奏が目指せると思います。
またコードへの理解と共に大切なのは、フレーズの作り方の意識だと考えています。
例えば一概にスタッカートといっても、どのように歌い始めどのように終止するのがそのフレーズへの理想的なアプローチなのか、楽曲や箇所によって変わってくるはずです。フレージングについてもグループ全体で考えるとより表現の統一感が増すと思います。

そして正しいハーモニーは適切な譜面のもとに成り立ちます。
譜面の進行や構成が適切でないと、そもそも目指せる完成度が下がってしまうと思います。
作譜者は楽曲のコード進行に則った譜面になっているか・構成は適切か(ブロックとブロックの繋がりに違和感はないか)・音域はそれぞれのメンバーに合っているか・人が歌うのに適切な難易度か なども考えながら、より良い譜面を制作していっていただければと思います。
楽譜を書いていない方も、上記の内容を意識しながら譜面に目を通し、疑問に思う点や意見があればグループ内で相談してみるといいと思います。
グループ全員で楽譜を精査することも必要な過程の一つと考え、意見を交わしながら楽譜のアップデートを図ってみてください。

これからも充実したアカペラライフを過ごされることを祈っております!

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