

審査講評
New A Live vol.21 ファイナルについて、3名の審査員の方々より講評を頂きましたので、掲載させていただきます。
山内翔平さんより
審査委員長の山内です。毎回長くなるので今回は簡潔にまとめました。
※私は音楽家でもエンターテイナーでもないですが、審査をさせていただく際には「1つ選べと言われたら1つを選ぶ」「好みやバイアスは0にできないが極力フラットに審査する」「音色含め何に対しても相対的に軽視しない」をモットーにしています。よろしくお願いします。
①大差はなし、ステージ全体の完成度をポイントに審査しました
今大会はこれぞ!という決め手がなく、審査が難航しましたが、その分安定して表現できていたグループに高い評価をつけました。難易度の高い和音やリズムは正しく演奏できてこその加点と判断しました。
②MCが良かったです
過去の大会と比較して、(当人達の意図かは不明ですが)引き込まれるMCが多く、単純に楽しかったです。一方で曲間の繋ぎの役割もありますので、次の曲の雰囲気を壊さないようなMCが良いかと思いました。
③懲りずに基礎練習を
シンコペーションやフィルイン等、いわゆるコスパの良い表現もありますが、一方で土台にはリズムやハーモニーの安定感が必要です。目の前の結果に一喜一憂せず、地道な練習に励んでください。
三上侃千さんより
今大会の審査を担当させていただきましたAIRS10期OBの三上です。
皆さんの初々しさと音楽への情熱が詰まったステージを拝見でき、大変嬉しく思いました。どのグループも今大会に向けて真剣に音楽と向き合い、仲間と共に一つのステージを作り上げようとする姿勢が伝わってきました。改めて、お疲れさまでした!
以下、審査を通して皆さんにお伝えしたいことを3点記載させていただきます。
① 基礎の重要性について
今回の大会を通して感じたのは、ハーモニーやリズムといった基礎的な部分に、まだまだ伸びしろがあるということです。特にリズムの揺れや音程の不安定さが、全体の印象に影響を与えてしまう場面が見受けられました。これは決して否定的な意味ではなく、皆さんがこれから成長していく余地が大きいという証です。
自分たちだけで練習していると、どうしても気づきにくい部分が出てきます。ぜひ、経験豊富な先輩方に積極的にアドバイスを求めてみてください。(北海道には上手な先輩たちが沢山いますので!)外からの視点が、自分たちの音楽を客観的に見直す大きなヒントになります。
② ベースの役割と責任について
私も学生の頃から長くベースをやっていますので、ベースについても少しだけ。
アカペラにおいてベースは、まさに土台です。ベースのピッチがわずかにでもずれると、その瞬間から演奏全体の安定感が失われてしまいます。少し強い表現になりますが、どれだけリードが素晴らしくても、ベースが不安定だとその魅力が十分に伝わらなくなってしまいます。
ベースの方には、ぜひ「自分が全体の音楽を支えている」という自覚を持って、音程やリズムの精度を高める努力を続けてほしいと思います。逆に言えば、ベースが安定するだけで、グループ全体の演奏がぐっと引き締まります。
練習方法等については、vol.21の私の講評も参考にしてみてください。
③ アカペラとの向き合い方について
北海道のアカペラシーンは、近年ますます活気づいており、全国的にもその存在感が高まっていると感じます。その中で、どうしても「大会で勝つこと」が目的になってしまいがちな風潮もありますが、アカペラの魅力は決してそれだけではありません。
自分達が歌いたい曲を、仲間とともに自由に表現すること。その楽しさこそが、アカペラの本質だと思います。大会はあくまで一つの通過点。ぜひ、長く、そして深くアカペラを楽しんでください。だからこそ、私自身今でもアカペラを続けられていると思っています!
以上、皆さんのこれからのアカペラライフが、より充実したものになることを心から願っています。素晴らしいステージをありがとうございました!
安井千遥さんより
New A Live vol.22に携わった全ての皆さま、まずはお疲れ様でした。
NAL実行委員として3年間活動し、最後の年は実行委員長を仰せつかりましたが、卒業して最初の大会にこうして審査員という形で関わることができて非常に嬉しく思います。
全体講評ということで、他のお二人の非常に有意義なお言葉がこの前にあられることと思いますが、私のパートまで読んでいただけていますでしょうか。この文章を読んでくれているという時点で向上心に溢れた素敵なアカペラーだと思いますので、貴方に小さな幸せが訪れることを願っております。(スタジオを予約したら大きめの部屋だった、とか。)
さて、前置きが長くなってしまいましたが、私からは特に今大会において気になった点について3つ、僭越ながらお伝えさせていただきます。
①イントロの大切さ
今回ファイナルで演奏していただいたどのバンドも、沢山練習を重ねてきたのだろうということがよく伝わってくる演奏でした。しかしその反面、イントロについてはあまり取り上げて練習はして来なかったのかな?というバンドが多く見受けられました。
美味しいサビを沢山練習したくなる気持ちは痛いほどよく分かります。ですが、イントロはいわば曲の顔、第一印象になりうるものです。(ルッキズムに傾倒しているわけではありません。)
最初に聴こえてくる音、見えてくる景色が素敵であれば、その後に続くAメロ・Bメロ・サビへの期待が膨らみます。逆にイントロがあまり魅力的でないと、そのバンドへのワクワク感が薄れてしまいかねません。
お客さんに自分たちの演奏に興味を持って聴いてもらうためにも、たかがイントロと思わずに、時間をかけて磨き込んでいただきたいと思います。
②「小さい」という表現≠弱々しい
これに関しては当日直接お伝えしたバンドもあるかと思いますが、特に気になったところでしたのでこちらでも少し述べさせていただきます。
今大会において、静かな場面を表現しようとするあまり、「弱々しい感じ」になってしまっている演奏がかなり多かったように思います。その結果、不安定な演奏やどことなくハモっていないような感じに繋がっていたと感じました。
「小さい」という表現と、「弱々しさ」は全く別物だと思います。単に音量を下げる(声を小さくする)こと以外にも、声の出し方・響かせ方を工夫するなど静かさを表現する方法は様々あると思います。
ダイナミクスを付けようという意識は素晴らしいですが、まずはしっかり音を鳴らす、ということが前提にある事に気をつけていただきたいと思います。
③ただ楽譜をなぞらず、アレンジの意味を考えること
私がありがたいことに沢山アレンジをさせて頂いていたので、最後に少しアレンジのことに触れたいと思います。
今大会で演奏されていた楽譜は主に先輩に書いてもらったものが多かったのかなと思います。(中には自分たちで頑張ってアレンジした曲もあると聞きました、とても素晴らしいです。)どれも素敵な楽譜ばかりだったのですが、それだけに、もったいないと思う場面が多々ありました。
それは、「ここのアレンジにはこういう意図がある」という理解がまだまだバンドの中で深まっていないと感じたためです。「何でここは総字ハモにししたんだろう」「何でここはウ母音ではなくア母音のスキャットなんだろう」など、挙げだしたらキリがないくらいですが、アレンジャーはそれぞれに意味を持って時間をかけてそのアレンジを作り上げているはずです。その意味を考えながら、時にはアレンジャーに尋ねながら、ただ楽譜をなぞるだけではない演奏を目指すことで、もう数段階レベルアップできると感じました。
最後になりますが、ここからが1番伝えたいことかもしれません。
是非、4年間最後までアカペラを楽しみ続けてください。せっかくこうして底なしの沼に片足突っ込んでしまった訳ですから、一緒に足をとられた素敵な仲間と、素敵な音楽を楽しんで欲しいなと思います。
より魅力的になった皆さまの演奏を、心から期待しております!